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富田 晃史 院長の独自取材記事

おちゃのまクリニック

(大和市/鶴間駅)

最終更新日:2026/05/28

富田晃史院長 おちゃのまクリニック main

鶴間駅から住宅街を歩いた先にある「おちゃのまクリニック」は、一軒家を改装して2026年4月に開業した。看板も待合室もなく、外観は住宅そのもの。訪問診療を主軸に、内科・小児科を標榜している。院長の富田晃史先生は、商学部から医学部への編入というユニークな道を歩み、小児科での研鑽や介護老人保健施設長としての経験を経て、在宅医療の世界にたどり着いた。「地域の日常の中に溶け込む一人の人間として、患者さんの生活に加わりたい」と穏やかに語る姿からは、医療者である前に人として寄り添おうとする温かさがにじむ。患者だけでなく家族の暮らしごと支えたいという思い、人を大事にするという揺るがない信念に至るまでの歩みを聞いた。

(取材日2026年4月24日)

一度は諦めた医師の夢、回り道の先で出合った在宅医療

先生が医師をめざされたきっかけや、これまでの歩みを教えてください。

富田晃史院長 おちゃのまクリニック1

小さい頃から、困っている人のそばですぐに手を差し伸べられる存在になりたいという思いがありました。テレビで救急の場面を見て、医師をめざしたいと感じたのが原点です。ただ高校の時に一度断念し、商学部に進学して監査法人で働いていました。それでも諦めきれない思いがくすぶっていて、調べる中で医学部編入という道を見つけ、働きながら受験勉強を始めたんです。家族には内緒で進めて、合格通知を手にしてから初めて報告しました。父親の第一声は「お前が医学部なんか受かるわけないだろ」で、医学部の合格証書を見せるとそのまま固まっていましたね。旭川医科大学を卒業後は、初期研修を経て順天堂医院の小児科で2年半、その後は介護老人保健施設の施設長として約5年勤務しました。

勤務医時代を振り返って、今も心に残っている経験はありますか。

小児科で勤務していた頃、嘔吐で搬送されてきたお子さんが予想をはるかに超える重症だったことがあります。座学で学んではいましたが、実際に経験して、軽症だろうという決めつけがいかに危険かを身をもって知りました。忘れられないのは、川崎病で長期入院していたお子さんのことです。後から来た患者さんが次々と退院していくのを見て、ずっと帰りたがっていたその子が、退院の日にナースステーションの前で大きな声で泣きながら「ありがとう」と言ってくれました。気持ちを込めて接してきたことが、取り繕えない子どもにもちゃんと通じていたのかなと思うと、本当にうれしかった。担当として関わった以上は喜んでほしい、幸せであってほしい。その思いはあの頃からずっと変わっていません。

その後、どのような経緯で開業に至ったのでしょうか。

富田晃史院長 おちゃのまクリニック2

介護老人保健施設の施設長をしていた頃、法人から訪問診療の手伝いを頼まれたのが在宅医療との出合いでした。未経験でしたが、実際に始めてみると、月に2回ご自宅にお邪魔する中で患者さんとの会話が自然と膨らんでいくんです。近況を伺いながらお話ししていると表情も良くなって、外来の短い診察とはまた違う、一人ひとりとじっくり向き合える手応えを感じました。ありがたいことに施設やご近所の方から感謝のお声を寄せていただき、担当する患者さんも増えていきました。その経験を通じて、もっと自分の手で一人ひとりを大事にしていきたいと考えるようになり、2026年4月に自宅の1階を改装して開業しました。訪問診療を中心に、外来は事前予約制でお受けしています。

身構えなくていい。日常に溶け込む在宅医療をめざして

在宅医療を通じて、どのような医療を届けたいとお考えですか。

富田晃史院長 おちゃのまクリニック3

突然の入院を経験された患者さんは、退院してもこれまでどおりの生活にすぐ戻れるとは限りません。少しでも日常を取り戻してほしいというのが、私の在宅医療の出発点です。ただ、どうしても医師が自宅に来るとなると身構えてしまう方が多いんですね。緊張される方もいれば、拒絶感を抱く方もいらっしゃいます。だからこそ医師としてではなく日常の中に溶け込む人間の一人として患者さんの生活に加わりたいと考えています。お友達が来たときのように「入って入って、お茶飲む?」くらいの気持ちで迎えてもらえたら理想的です。そうした日常の延長線上で健康の確認や処方の継続ができれば、精神的な負担はずいぶん軽くなるはずです。「おちゃのまクリニック」という名前には、そんな思いを込めました。

患者さんやご家族と接する際に心がけていることはありますか。

まず大切にしているのは、話を聞くことです。ご家族の中には強いこだわりやご要望をお持ちの方もいらっしゃいます。そのとき一方的に正論をぶつけるのではなく、どうしてそうしたこだわりがあるのか、背景にある思いを丁寧に聞くようにしています。背景がわかれば代わりの方法をご提案できることもありますし、お互いに許容できるところを一緒に探していけます。施設に入所されている方の場合は、ご家族と施設スタッフ、そして医師の三者がうまくまとまるよう調整役を担うこともあります。また、ご自宅に伺う以上プライベートな部分が目に入ることもありますが、こちらから深く踏み込むことはしません。相手が楽しそうに話してくれればそこから広げますし、そうでなければ無理に聞かず、その方のペースを大事にしています。

ご家族への説明で、特に丁寧にお伝えしていることはありますか。

富田晃史院長 おちゃのまクリニック4

最近特に丁寧にお伝えする機会が増えているのが、食べることに関するお話です。年齢を重ねる中で飲み込む機能が低下して、以前のように食事を取るのが難しくなる方がいらっしゃいます。食べ物の形や調理法を工夫することで食べやすくなる場合もありますが、体の変化としてどうにもならないケースもあります。ご家族が「なんとか食べさせたい」と思うのは自然なことですし、その気持ちは大切に受け止めています。ただ、無理に食べさせることがご本人にとって本当に幸せかどうか、一度立ち止まって一緒に考えてみませんかとお伝えすることもあります。ご本人の幸せの形を、ご家族と医療者が同じ方向を向いて探していく。その過程を丁寧に支えることが、在宅医療の大切な役割だと考えています。

「人を大事にする」が原点。家族の暮らしごと支えたい

クリニックの運営で大切にしていることを教えてください。

富田晃史院長 おちゃのまクリニック5

「人を大事にすること」、これが今もこれからも忘れてはいけない原点だと思っています。まずスタッフ一人ひとりが無理なく働き続けられる環境をつくること。そしてケアマネジャーさんや訪問看護師さんなど外部の関係者に対しても、事業所は違っていても一緒に患者さんを支える仲間ですから、気持ちとしてしっかり敬意を払うことを大切にしています。規則があるからではなく、人として自然に相手を尊重するということです。そうした土台があって初めて、患者さんを大事にする医療が成り立つのだと考えています。在宅医療は医師一人で完結するものではありません。関わるすべての方と信頼関係を築きながら、チームとして良い医療を届けていきたいと思っています。

これから先、どのようなクリニックにしていきたいですか。

現在は訪問診療を主軸にしていますが、将来的には外来の機能も充実させていきたいと考えています。ご自宅から動けない方には訪問で伺い、通院できる方には外来で対応する。その両方を備えることで、より多くの方に届く医療を実現したいんです。さらに内科・小児科に加えて、病児・病後児保育も視野に入れています。小さなお子さんが急に熱を出すと、親御さんは仕事も家事も止まってしまいますよね。入院が必要なほどではなくても預けられる場所があれば、ご家族みんながこれまで通りの日常に少しでも近づけるのではないかと思っています。めざしているのは、患者さんお一人の健康を守ることだけではなく、ご家庭やご家族、その暮らし全体の負担を軽くできる場所です。そのための一歩を、今ここから踏み出しています。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

富田晃史院長 おちゃのまクリニック6

医学的に重い軽いということと、患者さんご本人やご家族が感じる不安は必ずしも一致しません。ちょっとしたことでも気になることがあれば、難しく考えずにまず声をかけてください。クリニックにご連絡いただければ、ケアマネジャーさんや訪問看護師さんなど関係する専門職と連携しながら、どうしたら良いかを一緒に考えていきます。私が好きなある映画に出てくるキャラクターで「あなたの健康を守ります」というセリフあるのですが、まさにそんな存在でありたいと思っています。皆さんにとってのヒーローになれるかはわかりませんが、いつでも頼ってもらえる存在をめざしていますので、まずはお気軽にお声かけください。