岡本 亜希子 院長の独自取材記事
岡本歯科クリニック
(大阪市港区/弁天町駅)
最終更新日:2026/10/09
昔ながらの街並みと新しい建物が混在し、再開発によって今も姿を変え続ける弁天町。その住宅街にある「岡本歯科クリニック」も、2011年の開業から15年、地域とともに歩みを重ねてきた。白い壁にオレンジ色が映える外観、木目を基調とした温かな院内には、開業当初から変わらない親しみやすさが漂う。今では小さな子どもから高齢者まで、幅広い世代が足を運ぶ地域の歯科医院だ。迎えてくれるのは、この街で生まれ育った岡本亜希子院長。小児歯科で培った経験と自身の子育て経験を生かしながら、近年は訪問歯科診療や口腔機能にも目を向け、子どもから高齢者まで人生に寄り添う診療を追求している。大好きだというこの街で15年。変わらず大切にしてきた思いと、経験を重ねる中で広がってきた診療について話を聞いた。
(取材日2026年9月11日)
生まれ育った街に根差し、地域とともに歩んだ15年
改めて、地元である港区で開業された経緯から聞かせてください。

広島大学歯学部を卒業した後、大阪に戻っていくつかの歯科医院で勤務しました。その中でさまざまな経験を積み、開業を考えるようになった時に、「どうせなら地域に密着した歯科医院にしたい」という思いがありました。それなら、自分が生まれ育った港区が一番だろうと思い至り、ここに開業することを決意しました。私自身、この地域に育ててもらったという気持ちがありますから、ここで暮らす方々のお役に立つことで恩返しができればうれしいなと思ったことも理由の一つです。気づけば15年になりますが、小さなお子さんからご高齢の方まで、地域の幅広い世代の方に来ていただけるようになってすごくうれしいですね。長く通ってくださっている患者さんも多く、地域に根差した歯科医院でありたいという開業当初の思いは、今も変わっていません。
15年の間に、患者さんや地域との関係にも変化を感じますか?
開業した頃に小さかったお子さんが成長して、大人になっても通ってくださっていたり、ご家族で来てくださったりすることもあります。そういう姿を見ると、長く続けてきたんだなと実感しますね。また、以前と比べると、虫歯や歯周病になってから治療するだけでなく、悪くならないように定期的に歯科医院へ通うという意識も広がってきたように感じています。当院でも「予防に勝る治療はない」という考えは開業当初から変わりませんし、治療が必要になってからではなく、できるだけ良い状態を維持するために通っていただく。その積み重ねを、これからも地域の皆さんと一緒に続けていきたいと思っています。
小児歯科がご専門で、ご自身も子育てを経験されています。そうした経験は現在の診療にも生きていますか?

そうですね。小児歯科で多くのお子さんを診てきましたし、自分自身も子育てを経験したことで、お母さんやお父さんの気持ちは以前よりわかるようになったと思います。歯科医師としては「こうしたほうがいい」とわかっていても、毎日の生活の中ですべてを理想どおりにするのは難しいですよね。私自身、子育てをする前は「甘いものはあげないでください」と言っていましたが、実際に育ててみると、そんなに簡単ではないとわかりました(笑)。だから今は、できないことを責めるのではなく、そのご家庭の生活に合わせて「これならできそう」という方法を一緒に考えるようにしています。お子さんのことはもちろん、子育て中のお母さん自身の治療についても、気兼ねなく相談していただきたいですね。
訪問歯科で再認識した、口腔機能を守り育てる大切さ
現在は訪問歯科診療にも力を入れているそうですね。

はい。開業から15年がたち、長く通ってくださっている患者さんも増えました。その中には、年齢を重ねたり体が不自由になったりして、これまでのように通院することが難しくなる方もいらっしゃいます。でも、来られなくなったからといって、そこで関係が途切れてしまうのは寂しいですよね。できることなら、その後も私たちが診て、最期までお付き合いしていきたいと思っています。そして、何より大切にしたいのが「食べる楽しみ」です。好きなものを自分の口で食べることは、いくつになっても大きな喜びだと思うんです。その方の状態や希望に目を向けながら、少しでも長く食事を楽しんでもらえるように支えていく。地域の歯科医院として、そんな関わりを続けていきたいですね。
訪問歯科診療を経験したことで、口腔機能への意識も変わったのでしょうか?
そうですね。ご高齢の患者さんを診ていると、歯があるかないかだけではなく、噛む、飲み込む、話すといったお口の機能が、食事や日々の生活に深く関わっていることを実感します。さらに、お口をきちんと動かせることは清掃性にもつながるんです。舌や頬が動くことは食べ物を送り込むだけでなく、お口の中に汚れが残りにくくなるなど、自分できれいにする力としても働くんだと実感し、虫歯や歯周病を防ぎ、歯を残すだけでは十分ではないと感じるようになりました。食べるための機能そのものをできるだけ維持することも大切な予防の一つ。訪問歯科診療に取り組んだことで、改めてそこに気づかされたように思います。
その気づきが、子どもの口腔機能への取り組みにもつながっているのですね。

そうですね。小児歯科に携わってきたので、子どもの頃からお口の機能をきちんと育てることが大切だということは以前から感じていました。ただ、日々の診療の中で、そこまで腰を据えて取り組む余裕がなかったというのが正直なところです。取り組むからにはきちんとやらなければと思っていましたし、そうじゃなければ意味がないような気もしていました。でも、経験を重ねて、私自身も少し肩の力が抜けてきたのかもしれません。今は最初から完璧でなくても、まずは知ってもらい、できることから始めればいいと思えるようになりました。私一人ですべてを抱えるのではなく、周りの人たちも巻き込みながら、少しずつ取り組みを広げていきたいですね。
患者の「なんで」に向き合い、前向きな一歩を支える
実際の診療に際して、特に気をつけていることは何ですか?

患者さん自身に、今のお口がどんな状態なのかをきちんと理解していただくことですね。例えば、毎日歯を磨いているのに虫歯になってしまうと、「ちゃんと磨いているのになぜ?」と思いますよね。でも、磨き方に癖があったり、食生活や生活習慣が関係していたりと、そこには何かしら理由があります。だから、ただ「ここが悪いので治療しましょう」で終わるのではなく、なぜこうなったのか、これからどうすれば良い状態を保てるのかまでお話しするようにしています。私は、患者さんの「なんで?」を解決していきたいんです。ご自身のお口のことを知れば、日々の行動も少しずつ変わっていくはずですし、その変化をそばで支えていけるのが歯科医師や歯科衛生士のやりがいなんじゃないかと思っています。
患者さんに行動してもらうために、どのような伝え方を心がけていますか?
「いいよ、仕方ないよ」と受け止めるだけではなく、「これはやらなくちゃ駄目だから、ちょっと頑張ろう」と伝えることも必要だと思っています。そのバランスは大切にしたいですね。ただ、頑張ってもらうにしても、「やってください」と言うだけではなかなか続きません。特に毎日のケアやトレーニングなどは、少し面倒に感じることもあると思うんです。だからこそ、「これを頑張ると、こんなふうに良くなりますよ」と、その方にとってどんなメリットがあるのかをできるだけわかりやすく伝えるようにしています。何のためにするのかがわかれば、「それならやってみよう」と思ってもらえることもあります。寄り添うところと、背中を押すところ。その両方を大切にしながら、その方に合った関わり方をしていきたいですね。
最後に、地域の皆さんや読者へメッセージをお願いします。

開業して15年がたち、弁天町の街もずいぶん変わりました。駅も新しくなって、これまでなかった新しいお店も増えています。それでも、私にとってここが大好きな、生まれ育った街であることは変わりません。昔から暮らしている方はもちろん、新しくこの街に来られた方とも、これから少しずつ関係を築いていけたらうれしいですね。そして、お子さんが成長して大人になり、やがて年齢を重ねていくように、ライフステージによってお口の悩みもさまざまです。そんな一人ひとりを長く見守りながら、「何かあったら岡本歯科に聞いてみよう」と思っていただける存在でありたいです。この街と一緒に、私たちも成長していけるよう頑張ります。

