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横山 哲夫 院長の独自取材記事

YYキッズクリニック

(西東京市/保谷駅)

最終更新日:2026/07/06

横山哲夫院長 YYキッズクリニック main

ワイワイと楽しそうに遊ぶ子どもたちのイラストが目を引く「YYキッズクリニック」。院内に一歩足を踏み入れると、魚の帽子をかぶった横山哲夫院長の姿に、思わず表情がほころぶ子どもも多い。足元には人気キャラクターのスリッパ、時には電車の時計を身につけるなど、その装いにもユーモアがあふれている。こうした演出は「ハピネスをめざす医療」を掲げる院長ならではの工夫だ。しかし、その目的は単に子どもを楽しませることにとどまらない。「子どもを泣かせてしまうと、適切な診療ができなくなる」という、医療者としての確かな信念がその根底にある。子どもが安心して過ごせる環境を整えながら、同時に保護者の不安にも丁寧に向き合う。その診療のあり方について話を聞いた。

(取材日2026年3月19日)

子どもの興味を惹き診察の質を落とさない

先生の全身に子どもの興味を惹く工夫がたくさん隠れていますね。

横山哲夫院長 YYキッズクリニック1

私はまず、子どもとじゃれて反応を見るのを大事にしています。子どもの具合の悪さを調べるには遊ぶのが一番です。子どもが自分の状態を言葉で正確に表すことは難しいですが、嘘はつきませんし、見栄も張らず素直に反応してくれますからね。また、裸にしての診察にもこだわっています。裸での視診で発疹の有無や位置がわかり、呼吸の仕方に異常があるかどうかもわかります。聴診では、洋服の上から聴診器を当てても衣擦れでじゃまな音が入ってしまい、正確な診断に支障をきたすことがあります。さらに触診では皮膚を触らせていただくことで軽い乾燥肌の診断も可能になりますし、場所による程度の差異も判断できます。裸だからこそ診察の基本である視診、聴診、触診での情報をしっかりと得ることが出来るのです。裸はいろいろなことを教えてくれるのです。さらに泣いてしまっては正しい情報を得られないので、いかに泣かせないかにも全力で取り組んでいます。

子どもを泣かせないことはとても大事なのですね。

泣かせなければ聴診器で心臓の音もよく拾えますし、診察の質を落とさないために欠かせません。泣いてしまうのを避けるために、できれば待合室で前もってある程度脱衣して、何かをはおってお待ちいただければと思っています。ただ、最近は着衣したままの診察を望む親御さんも多いですね。もちろん、思春期に入りかけたお子さんはまた違いますが、小さな子はいかにして裸で泣かせずに診療できるかが鍵だと考えています。だから、私は子どもが診察室に入ってきたら頭に聴診器を当てるところから始めるんですよ。お子さんでも親御さんでも、どれだけ機嫌が悪くても、1回はニコッとさせることを目標にしています。

親御さんの笑顔への配慮もあるのは心強いですね。

横山哲夫院長 YYキッズクリニック2

小児科医の仕事は大きく分けて2つあると考えています。1つは医療、もう1つは子どもたちがきちんと社会人に育つように親御さんに協力することです。医療では子どもの病態をしっかりと診て、必要があれば投薬などの治療をします。「とにかく弱っている子どもに何かをしてあげたい」と心を痛めている親に、薬という手段を与えて時間稼ぎをしているといってもいいかもしれません。子どもたちは自らの力で治っていきますが、その間の親御さんの不安に寄り添うのも私たちの仕事です。お子さんの病状、必要な治療、数日後にどうなる可能性があるのかなどを丁寧に説明します。もし、今夜悪くなったらこうしなさいというアドバイスをすることもありますね。

わが子に「誇り」を持たせるような子育てを

小児科の、適切な受診のタイミングについてはどのように考えればよいでしょうか。

横山哲夫院長 YYキッズクリニック3

受診のタイミングについては、親御さんが「ちょっと心配だな」と思った時点で来ていただければ十分。例えばインフルエンザですね。発熱してすぐに検査をしても、早すぎて正確な結果が出ないことが多いのです。それに、あの検査はお子さんにとっても辛いですから、私は基本的にある程度時間がたってからでないとやりません。しかし検査には早すぎても来ていただくことはかまいません。その時は抗インフルエンザ薬を処方することが出来なくても、解熱剤などを処方させてもらい、とりあえず楽になってほしいからです。検査と処方はそのあとで適切な時期に行えればよいのです。ですので、受診のタイミングは“親御さんが必要だと感じたとき”で大丈夫です。その時の不安を取り除いて、お子さんを少しでも楽にしてあげる、それが私たちの役割だと思っています。

これまで数多くの親子を見てきて思うことはありますか。

保護者の方にいつもお伝えしているのは、愛情の“方向”がとても大事だということです。子どもって、どうしても“今”しか見えませんよね。注射もワクチンも嫌だし、しつけもつらい。でも大人は違って、先を見て判断しないといけない。今は嫌でも、将来その子のためになるなら、親がきちんとやらせることが必要だと思っています。嫌われたくないという気持ちで甘くなってしまうこともあると思うのですが、本来は“この先のことを考えて、今は我慢しよう”と言う役割があると思うのです。それは親にしかできない、大事なしつけの1つです。それから、私は“誇り”もすごく大切だと思っています。最近は「こんなことをするのは恥ずかしい」と思う感覚が弱くなっているように感じることもありますが、子どもにはぜひ、自分に誇りを持てるように育ってほしいですね。

親はどのような心構えで子どもと接したら良いのでしょうか。

横山哲夫院長 YYキッズクリニック4

子どもの「友達」まではよくても「下僕」にまでなってはいけません。「子どもに嫌われたくない」という気持ちを優先させるばかりではなく、将来、誇りを持って生きていけるように考えてあげてください。誇りがあれば「人間としてこれはやってはいけない」というのが見えてくるはずです。会津藩の什の掟「ならぬものはならぬ」も、根底にあるのは武士としての誇りですしね。その子なりの誇りをもたせていただければと思います。

人としての土台を家庭で育てる

最近の疾患で気になることはありますか?

横山哲夫院長 YYキッズクリニック5

最近の感染症の傾向を見ると、いわゆる“病気の旬”がなくなってきたと感じます。以前はインフルエンザも12月頃から始まり、1〜2月にピークを迎える流れがありましたが、昨年は11月から流行するなど、季節感が崩れています。背景にはコロナウイルス感染症の影響もありますが、それだけではなく、マスクの影響も大きいと思います。これまで私たちは日常の中で自然に病原体に触れ、気づかないうちに免疫をつけていました。いわゆる“不顕性感染”です。しかし、マスクによってそうした機会が減り、結果として免疫のつき方が変わり、感染症の流行が年間を通じて見られるようになってきたと感じています。

ところで、先生はなぜ医師になったのですか。

子どもの頃は野球選手を夢見ていました。でも、木場で呉服屋を営んでいた父に「医師ならば商売人のように人に頭を下げなくてすむ」と勧められたのです。そんな父は生粋の江戸っ子で、気に入らないお客さんの接客はしないなど、医師よりもよほど自由人でしたけれども(笑)。小児科を選んだのは、大学生の頃に塾講師のアルバイトをしていて、子どもとの純粋な付き合いがとにかく楽しかったからです。小児科医になってすぐは、どのような難病のお子さんでも「何としてでも救うぞ」と全力でした。ところが、重篤な後遺症でご家族が大変な思いをしているのを目の当たりにすることもあり……。「命を大切にする」とはどういうことなのか。今も考え続けているテーマでもあります。

最後に読者へのメッセージをお願いします。

横山哲夫院長 YYキッズクリニック6

実際のところ、親御さんが思っているほど薬に劇的な効果が期待できるわけではありません。ですから、“なるべく楽にして時間を稼ぐことも治療の1つなのだ”と理解していただけるといいと思っています。それから、社会の中で生きていく上での基本的な事として、感染症のときには“他の人に迷惑をかけない”という意識を持ってほしいと思っています。熱があるのに無理に保育園や学校に行かせるというのは、やはり周りに影響を与えてしまいます。子育てにおいて、私はよく“3つの言葉”を大事にしてくださいとお話ししています。「ありがとう」「ごめんなさい」「すごいね」、この3つですね。感謝と謝罪、相手への尊敬をあらわす言葉です。これがきちんと伝えられると、人間関係はかなりうまくいくと思います。医療で支える部分と同時に、そうした“人としての土台”を家庭で育てていくことが、将来につながっていくのではないかと考えています。