松村 美由起 院長の独自取材記事
代々木駅前脳神経内科・内科クリニック
(渋谷区/代々木駅)
最終更新日:2026/08/27
代々木駅西口から徒歩1分の「代々木駅前脳神経内科・内科クリニック」。東京女子医科大学附属成人医学センターに長年勤務してきた松村美由起院長が、患者と地域からの要望を受け、同センターの健診と外来を中心とする医療を引き受けるために開業した。日本神経学会神経内科専門医として認知症に悩む数多くの患者とその家族に接してきた松村院長。認知症だからと患者の生活に過度な制限を設けず「その人らしさ」を医療で支えたいとの思いを強く持ち、患者の思いをかなえることも重視する。開業から2年目を迎え、「今度は認知機能や体のフレイル予防にも注力していきたい」と話す松村院長に、診療にかける思いや今度の展望などを詳しく聞いた。
(取材日2026年4月6日)
認知症から生活習慣病まで。健診と神経内科でサポート
美術館のようなすてきな雰囲気のクリニックですね。

認知症の患者さんの切り絵アートも作家さんの作品を、待合室の壁に飾っています。お待ちいただく間に眺めながら、少しでも和んでいただけたらうれしいですね。当院は東京女子医科大学附属成人医学センターの閉院に伴い、通院されていた患者さんからご要望をいただき開業したクリニックです。ご高齢の方が多いので、駅から徒歩1分という通いやすい立地にもこだわりました。小規模ながら、同センターが行っていた健診と外来に対応するために先進のCTなども備えています。人間ドック、消化器を専門とする医師による胃内視鏡検査などの各種検査が充実しているのも特徴の一つです。また、私が専門としている認知症とともに、高血圧症や脂質異常症など体の病気の治療も含めた全身管理を包括的に行っています。
あらためて、認知症とはどのような病気なのでしょうか。
認知症はアルツハイマー型認知症が約7割を占めていますが、実はそれ以外にも数多くあることがわかっています。脳に異常なタンパク質の塊が蓄積することによって起きる病気で、原因はいまだに解明されておらず、残念ながら完治は見込めません。高齢者の場合、複数の認知症が併存していて、症状の出方も十人十色です。しかし、いずれのケースでも、これまでの人生で獲得してきたものを一つ一つ損失していき、生活しにくくなっていくのは共通しています。忘れてはいけないのは、たとえ認知症になったとしても人生は続くということです。残された人生を自分らしく生きるためにも、少しでも不安があれば、できるだけ早く受診してほしいと心から思います。
早期に受診することでどのようなメリットがありますか。

例えば、早期の認知症ならば、進行を緩やかにするためにレカネマブやドナネマブなどの新薬を使うことも可能です。何より、早期に治療を始めることでこの先の人生について考える時間を持つことができます。認知症が進行して理解力や判断力がなくなってからでは、もはや自分が何を希望しているのか決断が難しくなってしまいます。そうなる前に覚悟を決めて、病気と向き合い、未来のための準備を始めるのはとても大事なことです。当院では認知症の方が自分らしく希望を持って暮らし続けるために、医療だけではなく介護や制度の利用による生活支援なども行っています。
患者の思いをかなえるため、対話を重視した認知症治療
認知症などを診る神経内科を専門とするまでの道のりを教えてください。

ミッションスクールで思春期を過ごし「誰かの役に立つ仕事がしたい」という願いを持っていました。一人っ子だったため、会社を継ぐように期待しながらも、「やりたいことをしなさい」と応援してくれた父に感謝しています。神経内科に進んだのは、大学4年生の臨床実習で筋萎縮性側索硬化症(ALS)の患者さんと出会ったのがきっかけでした。人工呼吸器につながれ瞳しか動かせないのに、友達の冗談にふっと目だけで笑ったんです。豊かな感情は残っているのに、指先一つ動かせないままずっと1人で個室で過ごさなければいけないなんて、どんなに大変なのだろうと心が痛みました。同時に、原因もわからず、なすすべもなく悪化していく病気と向き合いたいと考えるようになったんです。認知症もその一つといえますね。
東京女子医科大学附属成人医学センターに長年勤務されてきました。
同センターは健診と外来を2つの柱としていて、まず病気ありきではなく「患者さんは何に困っているのか」を重視する診療を行っていました。そういった視点で認知症を診察してみると、これまでとは違う世界が見えてきたんです。大学院時代は研究班のテーマが認知症で、データ解析などのアセスメントの経験も十分に積み、わかったような気になっていましたが、まだまだ浅かったと言わざるを得ません。認知症の治療においては、患者さんがこれまでどのような人生を歩み、今は何に苦しみ、これからどうしていきたいのかを知るのがいかに重要かを痛感しました。「人と人として向き合うようになった」ともいえるでしょう。現在でも変わらずに大切にしていることの一つです。
診療ポリシーについてもお聞かせいただけますか?

大切にしているのは患者さんとの対話です。時間をかけて診察し、どうしたいのかを注意深く聞き取り、できるだけ希望がかなえられるよう知恵を絞ります。といっても、患者さんたちの望みは、例えば「1人で買い物をしたい」といったささやかなものなんです。これまで当たり前にできていた日常のちょっとしたことがまたできるようになることが、希望を取り戻すことにつながると考えています。そして対話の際には、適切な診断につなげるためにも、患者さんの話を思い込みを持たず聞くようにしています。患者さんが物忘れがあると言っても、「おそらく認知症だろう」と思いながら話を聞くことはしません。いつからどんな症状があるのか、生活にどんな支障が出ているかなどを丁寧に聞いて診断につなげるようにしています。
体と認知機能、両面のフレイル予防にも取り組む
今年の4月から、新しい取り組みを開始なさったそうですね。

フレイルの検査と、その対策のためのトレーニングを開始しました。普段から運動習慣がなく身体機能が衰えている患者さんに対して、体骨密度や筋肉量など体の状態を評価した上で、理学療法士がマンツーマンでトレーニングを行います。これは体だけではなく、認知機能のフレイルの対策も兼ねているのです。認知症患者さんや高齢者を見ていて、運動機能が落ちることで生活範囲が狭くなったり社会との接点が減少したりすることで、認知機能をが落ちてしまう場合があると感じました。それを回避するためにも、早い段階から生活範囲を広げ、社会との交流を活発にする必要があると感じたのです。当院では週1回40分のトレーニング行い、あとは週6回自宅で無理なく実施できるトレーニングを行っていただき、患者さんごとに合わせてプログラムを組んでいきます。高齢だからもう遅いと諦めず、多くの方に取り組んでいただきたいですね。
今後の展望についてお話しください。
東京女子医科大学附属成人医学センターに通院されていた患者さんを受け入れたいという思いから開業しましたが、開院から2年目を迎え、同センターの患者さんに限らず、より多くの方に当院の人間ドックを受けていただきたいと思っています。同センターでは、検診結果の説明や検診後のフォローなどを行う、プライマリ・ドクターのような何でも相談できる医師が患者さんをサポートしていました。当院でも、そのような方式を取り入れていきたいと考えています。65歳以上の3人に1人が認知症になるともいわれる中、誰にとっても他人事ではなく、もはや共生なくして社会は成立しません。共生社会の実現などを目的とする認知症疾患医療センターは全国に数百箇所あり、当院もその一つです。多職種との連携、市民講座などの啓発活動を通じ、これまで学んできたことを社会に還元していきたいです。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

認知症が心配な方はもちろん、健診などの予防医療に興味がある方など、さまざまなニーズをかなえたいと思っています。体力作り・認知症・一般の健康、三つ巴で全身の健康を支える存在になれればうれしいです。「ちょっと行ってみようかな」くらいの気軽な気持ちでお立ち寄りください。認知症本人会、家族会なども開催し、悩みを分かち合える場もつくっていく予定です。認知症であろうとなかろうと、お互いの違いを認めながら、誰もが制限を受けず幸せに生きられる社会を実現するためにできることは何か。皆さんが考えるきっかけになれたらと願っています。
自由診療費用の目安
自由診療とは人間ドック(基本ドック)/7万円(オプションはクリニックに相談)、フレイルの検査とトレーニング/5万円(骨密度、筋肉量、身体機能評価と12回のトレーニングを含む)

