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高田 賢 院長の独自取材記事

在宅・ケア たかたクリニック

(平塚市/平塚駅)

最終更新日:2026/02/18

高田賢院長 在宅・ケア たかたクリニック main

平塚市に拠点を置き、訪問診療を軸に展開する「在宅・ケアたかたクリニック」。立ち上げたのは、消化器外科を専門とし、食道がんをはじめとするがん治療の前線に長年立ち続けてきた高田賢院長。50歳を一つの転機として緩和ケアに軸足を移した後、2025年末、幼少期から親しんだ平塚市にて同院を開業した。その背景にあったのは「病気だけではなく、その人の人生を診たい」という強い思い。「治療の舞台を病院から生活の場へと移すことで、患者さん本人の価値観やご家族との関係性、これまで歩んできた人生そのものに向き合える医療がある」と、地域に寄り添ってきた。そんな高田院長自身の歩みと緩和医療への思い、そしてクリニックがめざす医療について、詳しく聞いてみた。

(取材日2026年1月22日)

がん治療の前線で気づいた「命」よりも大切なもの

消化器外科医として活躍された後、緩和医療へと転向されたと伺いました。

高田賢院長 在宅・ケア たかたクリニック1

消化器外科を専門とする医師として「神奈川県立がんセンター」で長く診療に携わってきました。食道がんを中心に、手術、抗がん剤治療、放射線治療まで一貫してマネジメントし、病理組織診断まで指導を受けながら担う日々でした。進行度を問わず命を長らえるための治療をする、それががんセンターの使命です。がん患者さんに接し、四六時中がんのことを考えているのが生業となっていました。しかし、どれほど最善を尽くしても進行や再発を防げない現実に何度も直面。患者さんだけでなく、ご家族が深く悲嘆され、「自分ががんになったほうが良かった」と言われる場面にも出会いました。そうした経験を重ねる中で、病気だけを診ていては見えないものがあると感じるようになったのです。その方が病気を得る前にどんな人生を歩んできたのかを知り、そして治療後のその人らしい時間を支えたい。そういった思いが募り、50歳を期に緩和ケアを学び直すことにしました。

「病気だけを診ていては見えないもの」とは?

病気はその方の一部であって全部ではありません。がん治療にひたすら注力していた時代の私は「命」を永らえさせることばかりに重きを置き、「命」よりも大切なその人の「人生」に目を向けられていなかったと気づいたのです。その方が仕事やプライベートで何を成し遂げられた方なのか、家族とどのように大切な時間を過ごしていたのか、病気になって何が一番つらいのか、今何が見えているのか。そういったことを考慮しながら向き合うことで、たとえ「死」に向かう場面でも「生」にフォーカスすることは可能です。例えば、病気が進行してつらいはずなのに、お孫さんがお見舞いに来ると私たち医療者には見せたことのないような笑顔で「おかげで痛くなくなった」などとおっしゃる方がいらっしゃいます。おそらく強がりではなく、その瞬間は現に痛みを克服しているのでしょう。苦痛を取り除くのは、抗がん剤や鎮痛剤だけではないのです。

終末期においても「生」にフォーカスした時間を支えたい、と。

高田賢院長 在宅・ケア たかたクリニック2

「死」は万人に平等に訪れ、誰にも予測できません。怖いものと忌み嫌われるかもしれませんが、時に「立派な闘病生活だった」とか「死が本人を苦悩から解放してくれた」「残念だけど良い人生だった」と周りが肯定的に捉える「死」もあります。「どのように亡くなったか」ではなく「どう生き抜いたか」「最期まで何を大事にしたか」と「生」にフォーカスした「死」でしょう。そんな充実した「死」を迎えるために必要なものは何だろうと、医療者に限らずさまざまな人の視点からの「死生観」を知るために、緩和ケアと同時に上智大学大学院で死生学も学び始めました。指導者や学生には哲学や宗教といった背景を持つ人も多く、魂の安らぎを求めるためにあえて「死」と向き合うことの大切さも知りました。そんな学びを経て、このクリニックを立ち上げました。

その人らしい時間を支えるための訪問診療と症状緩和

こちらのクリニックは訪問診療を軸とされているのですね。

高田賢院長 在宅・ケア たかたクリニック3

はい。住み慣れたご自宅で余生を過ごそうとしている方や、それを実現させてあげたいと考えているご家族のもとを訪れ、症状緩和を尽くして、本人らしく過ごせるよう支える診療がメインです。急性期病院での積極的治療が終わった方が、病院からの紹介で来られるケースが多く、今後もそうした流れが主となると考えています。とはいえ、緩和ケアは終末期に限定されるものではありません。熱があれば解熱剤を使う、痛みがあれば鎮痛剤を使う。それも立派な緩和ケアなのです。緩和ケアは、病に苛まれず、その人らしく過ごすための医療。治療の初期段階からでもご相談いただくことで、苦痛や不安を軽減し、生活の質を保つために関わりを持つことができるでしょう。終末期のための特別なものではなく、より良く生きるための医療として、緩和ケアをご検討いただければと考えています。

クリニックの体制を教えてください。

現在は私一人で訪問していますが、来月から訪問看護の経験を持つ看護師が加わる予定です。在宅医療の主役は患者さんご自身ですが、次に来るのは看護師だというのが私の考え。医師だけでなく、多職種がそれぞれの視点から患者さんの本質を見つめ、得られた情報を共有することで初めて成り立つのが在宅医療だと思っています。今後、医療・看護・介護とさまざまな方向から患者さんと関わる多職種連携を構築していきたいと考えています。それぞれの専門性を背景に、フラットに意見を交わせるカンファレンスは非常に重要です。そのために、クリニック内には大人数でのカンファレンスが行えるスペースを確保しました。誰か一人が正解を持っているわけではありません。患者さんを中心に、皆で悩み、考え続けることが、結果として良い医療につながると信じています。

平塚市での開業を決められた理由は何ですか?

高田賢院長 在宅・ケア たかたクリニック4

私は茅ヶ崎出身ですが、神奈川での勤務歴が長く「平塚共済病院」や「平塚市民病院」など急性期病院で働いてきました。この地域は医療連携がしやすく、顔の見える関係性を築きやすい土地だと感じています。この地の利を生かすため、ここでの開業を決めました。この辺りは在宅看取りが全国的に多いとされているエリアですが、在宅医療に携わる医師が十分とはいえません。ただ、在宅医療をより身近に感じていらっしゃる方が多いのではないかとは考えています。在宅で看取ることが最善とは言いませんし、私自身、以前は病院で死ぬほうがご家族の負担は小さいと考えていました。しかし、在宅だからこそ過ごせる時間やできることは多くあり、深く関わることがご家族の気持ちの整理に有用だということもあります。在宅医療を選択肢の一つとしてご用意することは、地域にとって大切なことだと考えているのです。

医師と患者ではなく人と人として、対等な関係に

診療の際に心がけていることはありますか?

高田賢院長 在宅・ケア たかたクリニック5

医療の専門家としてできる限りの手は尽くしますが、医者と患者という構図ではなく、人と人として、できればイーブンな関わりを持ちたいと常に思っています。病気の患者さんは決して「かわいそうな存在」ではなく、時には私たち医療者に足らない何かを補い、わからないことを教えてくれる「人生の大先輩」でもあるのです。お互いに痛みや苦しみがあれば分け合いたいですし、一緒に乗り越える術を探していきたいと考えています。

お忙しい日々とは存じますが、休日の気分転換に楽しんでいることはありますか?

小中学生にバスケットボールを教えています。地域のチームにコーチ兼チームドクターとして在籍しており、そのためにコーチや審判、スポーツドクターの業務などについて、さまざまな学びを得てきました。今は代表まで務めさせていただいています。喜びや悔しさといった感情をむき出しにしたり、全力で走る子どもたちの姿が、何よりの癒やしです。私自身も大学までバスケットボール部に所属しており、今でもシニアドクターズのチームでプレーすることもあるんですよ。

今後の展望と読者へのメッセージをお願いします。

高田賢院長 在宅・ケア たかたクリニック6

いろいろな人の意見を聞きながら新たな気づきを得たいので、カンファレンスには力を入れていきたいと考えています。地域の多職種との連携をますます深めていきたいですね。私自身、いまだ人生の半ばにあり、完璧にはほど遠い人間です。医師と患者という関係ではなく、困ったことがあれば一緒に考えていく伴走者になれればと考えています。これまでの医師としての知見をもとに、「自分なら」「自分の家族なら」といった視点も加味して寄り添っていければと思いますので、つらいこと、悩みなどあればどうぞ我慢せずに知らせてください。

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