冬野 誠也 院長の独自取材記事
なばたけ冬野クリニック
(唐津市/唐津駅)
最終更新日:2026/08/07
唐津駅から徒歩15分、縄文・弥生時代の稲作遺跡として知られる菜畑遺跡にほど近い住宅街に「なばたけ冬野クリニック」はある。1992年に先代が開業して以来、透析・腎臓疾患の診療を柱としてきた同院を2026年4月に継承したのが、冬野誠也院長だ。腎臓内科・透析を専門とする医師でありながら、「腎臓病は全身疾患だから」と内科全般を幅広く診療し、子どもから高齢者まで分け隔てなく受け入れている。穏やかな口調の中に地元への深い愛着がにじむ冬野院長は、唐津東松浦医師会の理事として、学校医や講演会の講師も務め、唐津市全体の医療に貢献したいと語る。患者の声に耳を傾け、スタッフと情報を共有しながら一人ひとりのニーズを拾い上げていく。その診療姿勢や地域医療にかける思いを聞いた。
(取材日2026年7月9日)
透析普及に携わった父の志を受け継ぎ、地元唐津へ
まずはクリニックの成り立ちについてお聞かせください。

当院を開業した父は長崎大学で呼吸器内科を学んだ後、九州大学の腎臓の研究室に移りました。ちょうど日本で透析医療が始まろうとしていた時期にあたり、その普及に携わったメンバーの一人だったんです。赤十字病院で内科部長として腎臓内科を担った後、1992年にこの場所で開業しました。当初から透析を柱にしつつ、一般内科の診療にもあたるという形を取っていました。クリニックの名前は、近くにある縄文・弥生時代の稲作遺跡として知られる菜畑遺跡の地名に由来しています。唐津駅から徒歩15分ほどの住宅街で、開業から30年以上になります。私自身もこの地域で生まれ育ちましたので、父が積み重ねてきた歴史とともに歩んでいる実感があります。
先生が腎臓内科の道を歩まれた経緯を教えてください。
父と同じ長崎大学に進学し、最初から腎臓を専門にしたいと考えていました。大学も専門も父の歩んだ道と重なるので、「一緒のレールを走っているようだ」と自分でも思いますね。卒業後は九州大学の関連病院を中心に研鑽を積み、日本腎臓学会腎臓専門医、日本透析医学会透析専門医の資格を取得しました。透析に必要なシャントという血管の通り道を造る手術も経験しています。勤務先は福岡や北九州、広島と各地にわたりましたが、その中で腎臓に限らず肺炎などの内科疾患を幅広く診る時期もありました。あの経験が今の診療に役立っていると実感しています。専門性を深めると同時に、内科医師として総合的に患者さんを診る力を身につけられたことは、大きな財産です。
お父さまとはどのような形で診療されてきたのですか。

2018年にこちらに戻り、父との2人体制で診療を始めました。週に1回は父がクリニックに出てくれて、その間は私が近くの済生会病院で腎臓内科の診療にあたるという形で分担していたんです。急な処置が必要な場面では互いにカバーし合いながら、協力して診療を進めてきました。そして今年の4月に院長を引き継ぎましたが、ありがたいことに地域の皆さんも変わらず通ってくださっています。父は穏やかで優しい性格で、とにかく患者さんとお話しするのが好きな人なんです。目の前の患者さんとの対話にいつも真剣に向き合っていて、その姿勢からは多くのことを学びました。患者さんを大切にするという気持ちは、自然と受け継いでいるのだと思います。
腎臓は全身疾患だからこそ、暮らし全体を診ていく
日々の診療ではどのような患者さんを診ておられますか。

腎臓は血管や心臓、感染症などさまざまな病気と深く関わる全身疾患ですので、内科全般を幅広く診ています。発熱や風邪、頭痛といった日常的な症状のほか、高血圧や糖尿病などの生活習慣病、睡眠時無呼吸症候群や禁煙のご相談にも対応しています。この地域では小児科が減ってきていることもあり、小学生ぐらいのお子さんであれば積極的に診るようにしていますし、学校検診やワクチン接種でも子どもたちに関わっています。また、当院では内科の受診でも積極的に検尿を行い、尿タンパクなどの異常を早い段階で見つけることを大切にしています。健康診査での指摘や保健師さん、近隣の先生方からのご紹介で腎臓のフォローにつながることも多いですね。
透析治療について、こちらならではの特徴を教えてください。
透析用のベッドを25床備えて対応しています。透析は週に3回、1回あたり4〜5時間ほどかかりますから、家族よりも長い時間を一緒に過ごす方もいるかもしれません。だからこそアットホームな雰囲気を大事にしていて、各ベッドにテレビを設置し、インターネットも快適に使えるよう整えました。唐津市はとても広く、玄海町や呼子方面から片道30分以上かけて通う方もいらっしゃるので、送迎にも対応しています。栄養面では、月に数回栄養士が来院し、タンパク質をしっかり取ることを中心とした指導を行っています。また、電子カルテの導入により毎月の採血やエックス線のデータを時系列で確認でき、薬の調整も一人ひとり丁寧に行える体制になっています。
患者さんと向き合う上で大切にされていることはありますか。

腎臓の病気は長く付き合っていくものですから、できるだけフレンドリーに距離を縮めて、信頼関係を築くことを大切にしています。ガイドラインに沿った治療を基本にしつつも、患者さんの要望にはしっかり耳を傾け、新しい取り組みにもチャレンジしています。自分で勉強して、学んだことを患者さんにフィードバックする姿勢は常に持ち続けたいですね。例えば腹部エコーで脂肪肝の状態を実際に目で見てもらい、食事や運動の改善につなげていく。変化を目で確認していただくことが、患者さんのモチベーションにもつながればと考えています。精査が必要な場合は近隣の総合病院とも連携しており、かかりつけ医としていろいろ対応できていると実感しています。
小さな悩みも気軽に相談を。唐津の医療を支え続ける
患者さんの変化にはどのように目を配られているのですか。

患者さんが待合室にいるときから、声の調子に耳を傾け、様子にも目を配るようにしています。診察室に入ってこられる前のちょっとした変化に気づくこともありますし、事務や看護師が患者さんと交わす会話の中から大切な情報を得ることも少なくありません。スタッフと日頃から情報を共有しておくことで、たとえ月に1回の通院であっても小さな変化を見逃さないよう心がけています。うちの看護師は若手からベテランまでフレンドリーな人が多く、患者さんと気軽に言葉を交わせる関係性ができているんです。そうした日常のやりとりの中で得られる情報は貴重ですし、私一人の目では限りがありますから、チーム全体で患者さんを見守ることが大切だと考えています。
クリニックでの診療以外に取り組まれていることはありますか。
唐津東松浦医師会の理事として、地域医療や感染症の担当を務めています。それに加えて学校医や講演会の講師など、院外での活動にも力を入れています。糖尿病や内科に関する講演の依頼をいただくこともあり、地域の健康づくりに関わる機会が増えました。こうした活動は、正直なところ手を挙げる先生が少ない分野でもあるのですが、私はできるだけ率先して引き受けるようにしています。普段はあまり見えない仕事ですが、地域に貢献できるというやりがいを感じています。唐津市全体の医療をより良くしていくためには、地域の医師が協力し合うことが大切です。若い先生方にも一緒に関わってもらいながら、みんなで力を合わせていけたらと思っています。
最後に、読者へのメッセージをお願いします。

当院は透析や腎臓疾患のクリニックという印象をお持ちの方も多いかと思いますが、実際には内科全般を幅広く診ています。風邪や生活習慣病はもちろん、お子さんの発熱やちょっとした体の不調まで、気になることがあれば腎臓に限らず何でも気軽に相談してほしいと思っています。生まれ育った唐津で地域の皆さんの健康に関われることは、私にとって何よりのやりがいです。お近くにお住まいの方だけでなく唐津市全体の方々を支えていきたいという気持ちで、日々の診療にあたっています。父の代から30年以上にわたり地域とともに歩んできたクリニックですので、これからもその歴史を大切にしながら、安心して何でも話していただける場所であり続けたいと考えています。

